【トランス脂肪酸で今知っておくべきこと】実はマーガリンよりバターの方がトランス脂肪酸が多い?!
「トランス脂肪酸って何がからだに悪いの?」
「えっ、バターにもトランス脂肪酸が入ってるの?!」
「結局、トランス脂肪酸は食べない方がいいの?」
「トランス脂肪酸ってからだに悪いんでしょ?」ってよく言われますが、「何が悪いのか?」みなさまはご存じでしょうか。
以前、「良い油と悪い油」というテーマで、油に関する記事をまとめたのですが、今回はその中から「トランス脂肪酸」を掘り下げる記事となります。トランス脂肪酸の悪影響を調べたうえで、「じゃあどうしたらいいの?」をまとめてみました。
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その前に「良い油と悪い油が気になった」という方は以下の記事をご覧ください。
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■この記事のポイント
- トランス脂肪酸とは?
- トランス脂肪酸ってなにが悪いの?
- 海外ではトランス脂肪酸に関する規制が強化されている
- じゃあ、日本の対応は?
- マーガリンよりもバターの方がトランス脂肪酸が多い
- 結局大事なのは、脂質全体の摂取量をコントロールすること
- まとめ(筆者の提案)
トランス脂肪酸とは?
トランス脂肪酸とは、不飽和脂肪酸に分類される脂肪酸の一種であり、天然で食品中に含まれているものと、油脂(油)を加工・精製する工程で発生するものがあります。
天然でできるもの
牛や羊などの反芻(※1)動物では、胃の中の微生物の働きによって、トランス脂肪酸が作られます。
そのため、牛肉や羊肉、牛乳や乳製品の中には微量のトランス脂肪酸が天然で含まれています。
※1反芻(はんすう)・・・一度飲み込んだ食べ物を再び口の中に戻して、再咀嚼(さいそしゃく)すること
油脂の加工・精製でできるもの
常温で液体の植物油や魚油に水素を添加することで、半固体又は固体の油脂を製造する加工技術があります。
この水素を添加する、という工程でトランス脂肪酸ができます。
この水素添加された油脂(部分水素添加油脂)は、マーガリンやファットスプレッド、ショートニングなどで使われています。
また、それらを原材料に使っている、パンやケーキ、ドーナツなどの洋菓子には、トランス脂肪酸が含まれることになります。
また、植物や魚からとった油を精製する際に、臭いを取り除くために高温で処理する工程があり、この工程でトランス脂肪酸ができることがあります。
そのため、サラダ油などの精製した植物油にも、トランス脂肪酸が含まれているものがあります。
トランス脂肪酸ってなにが悪いの?
トランス脂肪酸は、悪玉コレステロール(LDL コレステロール)を増加させて、善玉コレステロール(HDL コレステロール)を減少させる作用があります。
その結果、動脈硬化による心筋梗塞や狭心症といった心臓の病気、脳梗塞のような脳の病気になる可能性を高める、と言われています。
海外ではトランス脂肪酸に関する規制が強化されている
病気になる、って言われたら「もう食べない」の一択になるんじゃないかと思いますよね。
海外はその方向で動いているみたいです。
世界的な動き
2003年にWHO(世界保健機関)は生活習慣病を防ぐために、脂質のうち、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸については上限量を設定し、それより多くとらないようにすることを目標としました。
トランス脂肪酸については、摂取量を総摂取エネルギーの1%に相当する量よりも少なくすることを目標としています。
また2018年5月14日、WHOは油脂加工から生成されるトランス脂肪酸(トランス型不飽和脂肪酸)を世界の食品から撲滅することを目指して、独自ガイド「REPLACE」を発表しました。(ガイドの内容は割愛します)
この流れを受けて、アメリカやカナダなどの国は、2018年から部分水素添加油脂(PHO)を禁止しており、タイも2019年の1月にPHOを禁止しました。
これらの国の食品メーカーは、人工的なトランス脂肪酸から不飽和油などの健康的な油に切り替えて製造をしているようです。
また、アルゼンチン、中国、サウジアラビアなどでは、包装食品の栄養成分表示にトランス脂肪酸の含有量を表示することが義務付けられています。
アメリカの動き
「部分水素添加油脂」の使用を規制しています。
〇加工食品中のトランス脂肪酸の含有量の表示を義務化
〇部分水素添加油脂の食品への使用を許可制に変更(これまでは無許可で使用可能)
※トランス脂肪酸そのものではなく、あくまでも規制対象は「部分水素添加油脂」であることに注意
〇特定の方法で「部分水素添加油脂」を使いたい場合は、その方法での使用許可を得る必要がある
※「米国:農林水産省」より引用
EUの動き
食品中のトランス脂肪酸の含有量を規制しています。
〇水素添加油脂を使用した食品の原材料表示では、それが完全水素添加油脂あるいは部分水素添加油脂のどちらであるのかを表示しなくてはならない
〇消費者向けに販売される食品中のトランス脂肪(天然由来のものを除く)は、脂質100 gあたり2 gを超えないようにしなければならない
〇消費者向けまたは小売業者向けではなく、事業者間で取引される食品中のトランス脂肪酸が上記の基準値を超えている場合には、供給元の事業者はその旨を供給先に知らせなくてはならない
また、トランス脂肪酸のみではなく、飽和脂肪酸も含めた規制を行っています。
以下の要件を満たす場合に、低飽和脂肪酸、又はこれに類する表示が可能
〇食品が固体の場合には、食品100 gあたりの飽和脂肪酸とトランス脂肪酸との合計が1.5 gを超えないこと
〇食品が液体の場合には、食品100 mlあたりの飽和脂肪酸とトランス脂肪酸との合計が0.75 gを超えないこと
〇食品が固体であっても液体であっても、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸とをあわせたエネルギー量が、その食品のエネルギー量の10%を超えないこと
以下の要件を満たす場合に、飽和脂肪酸フリー(飽和脂肪酸を含まない)、またはこれに類する表示が可能
※「EU:農林水産省」より引用
じゃあ、日本の対応は?
WHOが掲げるトランス脂肪酸の摂取目標(総摂取エネルギー量の1%以内)を、日本は下回っていることを背景として、2021年8月現在、日本ではトランス脂肪酸に関して、特に規制は設けていません。
また、食品メーカーに対しては、トランス脂肪酸の自主的な低減や情報開示を促すスタンスをとっています。
実際に、日本の食品中に含まれるトランス脂肪酸の量は、食品メーカーの自主的な取り組みにより、減少傾向になっている食品があるようです。
※「平成26・27年度調査結果(穀類加工品、乳類、油脂類、菓子類、嗜好飲料類、調味料・香辛料類、調理加工食品):農林水産省」参考
日本に規制が無い背景は、日本人の平均的なトランス脂肪酸の摂取量が、WHOが掲げる目標値を下回っている、ということになりますが、これってどうなんでしょう?
まず、日本のトランス脂肪酸摂取量の調査が行われたのは、平成26年(2014年)ということで、今はどうなんだろう?という疑問が沸きます。
さらに、今回の調査で分かった、日本人のトランス脂肪酸の摂取量は、あくまでも平均値なので、当然平均値よりも多く摂取している人がいるということです。
ですので、日本は規制しているわけではありませんが、トランス脂肪酸を含んでいるものをよく食べる人はやはりリスクがある、ということに注意が必要です。
マーガリンよりもバターの方がトランス脂肪酸が多い
実は今回、わたしが一番驚いたのがバターにもトランス脂肪酸が含まれていて、さらにマーガリンよりも含有量が多い、という情報でした。
※「トランス脂肪酸のご心配について 食品製品 事業内容 ミヨシ油脂株式会社」参考
ただ、この情報をそのまま受け取ると、「バターよりもマーガリンの方が良いの?」となってしまうので、注意が必要です。
バターとマーガリンのトランス脂肪酸含有量は、農林水産省が出している情報(平成26・27年度調査結果(穀類加工品、乳類、油脂類、菓子類、嗜好飲料類、調味料・香辛料類、調理加工食品):農林水産省)がもとになっているようなのですが、よくよく見ると、
- マーガリン 中央値:0.99、範囲:0.44~16(g / 食品100g)
- バター 中央値:1.7、範囲:0.65~5.8(g / 食品100g)
となっており、これらの中央値を比べてバターの方がトランス脂肪酸が多い、と言っているようです。
確かに、中央値を比べるとそう言えなくもないですが、注目すべきは中央値ではなく、範囲の方です。
マーガリンの範囲を見ると、最大16g含んでいた食品があったということが分かります。
つまり、これらの数字を見て、消費者として気を付けたいことは、「マーガリンはからだに悪い」とか、「バターよりもマーガリンを食べよう」ではなく、
マーガリンはものによって、トランス脂肪酸の含有量にばらつきがあるので、「マーガリンを買うときは、できるだけトランス脂肪酸が少ない商品を選ぼう」ということではないでしょうか。
さらに、バターに含まれるトランス脂肪酸は、マーガリンに含まれる人工的なトランス脂肪酸とは異なり、天然由来の成分です。
そのため、トランス脂肪酸の含有量だけに注目して、「バターよりもマーガリンの方が良い」と主張する人がいれば、注意が必要です。
トランス脂肪酸を規制している国においても、有害であるかまだ分かっていないことから、天然由来のトランス脂肪酸は規制の対象外としています。
結局大事なのは、脂質全体の摂取量をコントロールすること
トランス脂肪酸がからだに悪いと言われるのは、悪玉コレステロール(LDL コレステロール)を増加させて、善玉コレステロール(HDL コレステロール)を減少させる作用を持っていることが原因でした。
そして、悪玉コレステロールを増加させる作用を持つのは、飽和脂肪酸も同様です。
なので、せっかくトランス脂肪酸を控えても、飽和脂肪酸を大量に摂取していると、結局病気になるリスクは抱えたままとなります。
ただし、最近の研究だと、飽和脂肪酸のなかでもコレステロールを増加させるものと、そうではないものがあるようです。
コレステロールについて、以下の記事にまとめてみましたので、興味のある方はぜひご覧ください!
まとめ(筆者の提案)
これまでに調べた内容を踏まえて、わたしが実践していることは以下の通りです。
トランス脂肪酸が入っている商品は極力避ける
海外ではトランス脂肪酸の摂取量が比較的多い国が、摂取量を減らすために規制が行われており、日本ではWHOの目標値以下なので規制はしていないものの、食品メーカーがトランス脂肪酸の低減努力を行っている、という状況です。
この状況を踏まえると、少なくともトランス脂肪酸がからだに良くないことは明らかではないでしょうか。
なので、トランス脂肪酸を含む商品は極力食べない、というのがパパ夫の基本的なスタンスです。
トランス脂肪酸を含んでいる好きな商品はたまに食べる
とは言え、トランス脂肪酸を含んでいることが分かっていても、美味しいものは食べたいものです。
なので、ここは各自で判断する領域になると思いますが、わたしはどうしても食べたいものがあれば、それは何かのご褒美という扱いで、たまに食べるようにしています。
からだに良い油を摂取して、悪い油は摂取しない
結局これに尽きる気がしますが、大事なのはコレステロールを適正な範囲内でコントロールすること(高くても低くてもダメ)です。
なので、トランス脂肪酸だけ切り離して考えるのではなく、トランス脂肪酸は悪い油の1種という扱いをして、からだに良い油を積極的に摂取する、というスタンスでいたいと思っています。
いかがだったでしょうか? 今回の記事がみなさまの参考になれば、嬉しく思います。それではまた!
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